お知らせ・セミナー
第1回 分子病態学セミナー
演題 | ユビキチン酵素による熱ストレス反応、及びオートファジーの制御 |
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講師 | 池田 史代 博士 Institute of Molecular Biotechnology (IMBA), Vienna, Austria *池田先生は阪大・歯出身で気鋭の女性研究者です。本講演は英語で行われます。 |
日時 | 2016年11月28日(月)午後5時より |
場所 | 6階 中講義室2 |
連絡先 | 分子病態学(1生化) 徳永 文稔 (内)3720 E-mail: ftokunaga(at)med.osaka-cu.ac.jp |
ちらし |
要旨
ユビキチンはタンパク質の翻訳後修飾に使われ、様々な生物学的機能を制御する。ユビキチンは、その内因性の7つのリジン基、もしくはメチオニン基 (Met1)を介してポリマーを形成することができる。このプロセスにおいて重要な役割を果たすのが、ユビキチン酵素である。本セミナーのトピックは、ユビキチン酵素によるストレス反応制御(熱ストレス、およびオートファジー)についてである。
1)直鎖型ユビキチンリガーゼによる熱ストレス反応制御
これまでに、HOIPユビキチンリガーゼ依存性のMe t1を介したユビキチン鎖(直鎖型ユビキチン鎖) 生成が、免疫系および細胞死シグナル経路、マウスの発生に重要な役割を担っていることが明らかにされている。しかしながら、直鎖型ユビキチン鎖形成に必須であるHOIPリガーゼのノックアウトもしくは不活化型変異ノックインマウスは胎生致死であるため、マウスモデルを用いた直鎖型ユビキチン鎖の新たな生物学的機能解析は簡単ではない。今回、我々はショウジョウバエCG11321が、ヒトHOIPの相同分子種であることを同定し、LUBEL (Linear Ubiquitin E3 Ligase) と名付けた (Asaoka et al., 2016, EMBO Rep)。また、CRISPR/Cas9によりLUBEL酵素活性部位に点変異をもつLUBEL不活型ショウジョウバエモデルを確立し、LUBEL依存性の直鎖ユビキチン鎖が熱ストレス耐性に重要であることを明らかにした。これらの直鎖型ユビキチン鎖の新たな生物学的役割について、および現在進行中のハエモデルを用いた生物学的役割解析のアプローチについて議論したい。
2)ユビキチン酵素によるマクロオートファジー制御
ユビキチンは選択的オートファジー制御に関与することがわかっている。しかしながら、ユビキチンがマクロオートファジーに関与するか、また、どのユビキチン酵素がマクロオートファジーを制御するかについてはよくわかっていない。我々は、ユビキチン酵素をターゲットにしたshRNAライブラリーを作製し、オートファジーレポーターを発現するMEF細胞を用いたスクリーニングを行った。その結果、いくつかの新たなオートファジー制御因子を同定することができた (Ebner et al., in revision)。スクリーニングのアプローチおよび、同定された制御因子によるオートファジー制御について論じたい。